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企業農地特例、全国展開の可否検討開始 竹中平蔵が狙う農地

 

ポイント
現在、国家戦略特区の兵庫県養父市でのみ認めている

全国展開の可否を検討

竹中平蔵・パソナグループ会長ら同特区諮問会議の民間議員は、特例の全国展開を強く求め続けている。

 

(日本農業新聞)

国家戦略特区の兵庫県養父市で認めている、一般企業による農地取得の特例を巡り、政府は2021年度中に全国でニーズや問題点を調査し、全国展開の可否を検討する。同特区では、市が農地をいったん買い入れた上で企業に売り渡す条件を付けている。しかし、別の特区制度ではかつて、条件付きで始まった農地のリース制度が全国展開後に、その条件が緩和されたことがある。

農地法で、一般企業は農地の取得や所有を制限されているが、農地を借りて営農する「リース方式」は、2003年に構造改革特区で解禁された。05年には「特定法人貸付事業」として全国で可能になった。

特定法人貸付事業は全国展開された当時、農地の適切な利用を担保するため、市町村などが農地の権利をいったん取得してから企業に貸し付ける仕組みだった。リースが可能な地域も、耕作放棄地などが多い場所に限定していた。

しかし、09年の農地法改正で、これらの条件がなくなった。役員ら1人以上が農業に常時従事するなど一定の要件はあるが、リース方式であれば一般企業でも自由に農業に参入できるようになった。

養父市で認めている一般企業の農地取得も、市がいったん農地を買い入れてから、企業に売り渡す仕組みだ。農地が適正利用されない場合、市による買い戻しも義務付けている。

だが、特区を担当する内閣府は、企業の農地取得の特例について、養父市以外から活用の要望が上がっていない理由として、「自治体が農地売買を行う必要があり、強い関与が求められる」ことを指摘している。

東京大学大学院農学生命科学研究科の安藤光義教授は「自治体の関与が、企業による農地の不適正利用に対する抑止力を発揮している」と指摘。農地のリース制度と同様に、将来的にこうした条件がなくなれば、悪影響が大きいと指摘する。

自民党は昨年11月、特例の全国展開に加え、要件の見直しも「到底容認できるものではない」とする決議を採択している。ただ、竹中平蔵・パソナグループ会長ら同特区諮問会議の民間議員は、その後も特例の全国展開を強く求め続けている。

 

農業は個人経営体数が100万割れと減少傾向、「担い手」の規模は拡大傾向。

 株式会社や農事組合法人など、団体経営体数は3万9500となり、前年より2・9%増えた。10年間では25%増。同省は「集落営農組織の法人化や一般企業の農業参入などが進んでいる」(経営・構造統計課)とする。