コミュニケーションにちょっと幅が出るかも
山田君(仮名)とは、主にLINEでやり取りしながら計画を進めています。
すると、すぐに話があちらこちらに脱線するのです。
返済計画の核となるような堅い話をすると、ストレートな反応ではなく、斜め前に進んだ返答か、もしくは全く関係の無い話題が返ってくるのです。
彼とは付き合いも10年程あり、今に始まったことではないのですが、今回に関しては事情が事情なので、その真意を考えておかないといけないなと思い、考察しました。
これがまた、よく考えると凄いことなのかもしれない、と思えてきました。
今回は「計画の話をしても結局雑談に終わる意味」というテーマで書きたいと思います。
「身近に、会話が成立しない人がいる」という人には、もしかすると一読の価値があるのかもしれません。
プロジェクトの意図を再確認
返済計画としては、骨組みはできていて、脳内作業の8割は終わった感じがしています。あとは具体的なことを伝えて、軌道修正を加えながら経過を観察する作業をするだけです。もちろんあくまで机上のことで、油断してはいけませんが。
というのも、計画通りに1日を過ごすことは簡単であっても、最長5年という期間を考えるとどうでしょうか。1800日を超える期間、ずーっと計画を意識して、緊張しながら過ごすという、こんなに苦痛な人生があるでしょうか。
答えは「NO」です。
続くわけがありません。極端に言えばですが、僕の中では、
①挫折するか
②債務履行を苦痛に思わない[習慣]が形成されるか
の二択だと思っています。だってそうですよね、山田君は自分の意志ひとつで108万円の借金をしたわけではありませんよね。借金に借金を重ねる過程で、[悪い習慣]が形成されたことこそが、彼が今苦しんでいる真の要因なのですから。
誤解を防ぐためにひとつ言っておくと、多重債務=苦痛ではありません。例えば、資産を急拡大させているような活発な不動産投資家の中には、多重債務者がたくさんいます。何が違うのかというと、「資産になる借金なのか、負債になる借金なのか」だと思います。
今、我々がプロジェクトとして取り組んでいる問題の本質は、
山田君が、借金を返すのに十分な[一生ものの良い習慣]を身につけ、無事に完済することに他なりません。
そして数年後、山田君の習慣形成がうまくいって、過去のものとなった108万円の借金は、「振り返ると、資産になる借金だったなぁ」と思ってもらえたら最高なのです。そうなると信じて、プロジェクトを投げかけました。
脱線の本質は、美しい
土俵は整ったわけです。そして山田君の足は、俵にかかりました。ピンチであると同時に、逆転のチャンスです。
そして僕は、いくつか具体的な行動を促すと共に、プロジェクトの三本柱を伝えました。
①資産管理
②マインドセット
③アウトプット
我ながら素晴らしい3本柱です。すると、パンダのスタンプが返ってきました。核心部分には反応がありません。
そして雑談に移行します。
・自虐ネタ
・酒呑みネタ
・下ネタ
・労働
・ゴシップ
・戦争
などなど。彼との雑談は軽快で、面白く、非常に多岐にわたります。
三本柱は真剣に伝えたつもりなので、戸惑いが無いと言えば大ウソです。
だからここで整理させてもらいます。
真剣な話をしていて、雑談に移ることほど、美しいことはありません。
山田君が発しているのは、「本題からは逃げるが、友達という人間関係からは逃げない」という意思表示なのです。つまり、うまくいっている証拠なのです。バカにしているわけでも、はぐらかしているわけでもありません。ここで勘違いして、離脱する人が多数いるのです。
作業内容を正確に、または詳細に伝えるだけで返済計画がうまくいくのであれば、誰も苦労はしません。
彼は、言語化して追加質問をするほど献身的ではありませんが、「真意が深く伝わっていないよ」と。このまま「YES」と言って始めてしまうと失敗するぞ、ということを暗に教えてくれているのです。
説明の工夫不足⇔質問不足 こんな関係、よく見かけないですか?
例えば、職場でも、このようなパターンで会話が成立していない上司と部下を私は毎日見ています。どちらの不足にも、必ず意図があるのです。どんな態度を示す相手にも、ひとつ納得のいくストーリーがあるのです。
戸惑うのは、僕(伝える側)の大きな勘違いなんです。性善説ではビジネスも家庭も長くは回りません。
山田君は根っからの正直者なんです。無理なものにはYESと言わないのです。そして慎重派なのです。言い換えれば、
だから、何度も何度も脱線して「信用の見積もり」を確認するのです。「話を変えた」ことを、「話を変えた」と受け取るのは早計です。
もう一度言いますが、真剣に本質論をぶつけても、その返答は無くて、雑談に切り替わるんですよ。戸惑いが無いと言えば大ウソです。でも、これは、最高にうまくいっている証拠なんです。ビジネスとは、お互いの虚構を一致させる契約だからこそ、信用第一なのです。
雑談の時代が来たよ
信用は、本音を交換することで生まれます。本音は、非ポジショントークつまり雑談から出やすいのではないでしょうか?
経済効率を重視するマネーマネープロでは、こういった解釈はなかなか困難でしょう。同じ金額が入るなら、成果が出やすい顧客を選ぶでしょうから。
今回の案件で僕が提示した報酬は「成功報酬でうまい飯を食わせろ」です。現金化を後ろに後ろに延ばして、信用の獲得に注力した形です。ゴールの形次第で、うまい飯を何回食わせてもらえるのか、プロジェクトの今後が楽しみです。
雑談形式の良いところは、信用を交換できることです。議題の本質を捉えていなくても、人格の本質を捉えていれば全然オッケーではないでしょうか。
雑談の末に、彼は「わいがヤバくなったらマジで頼むわ」「怖くてしゃあないわ」「このままやとオヤジに合わす顔が無い」と、本音をぶつけてくれました。
関係ない話をする中にも、偶然、三本柱に関してもほんのり出てきました。
もしかすると、真っ直ぐに伝わらない理由のひとつに、「用語」の不和があったのかもしれません。
例えば、本に書いてある堅い言語を、僕はそのまま咀嚼せずに、借り物の言葉で伝えたせいで、刺さる言葉も刺さらない、とか。「用語」や「論調」に関しては、色んな要素がありそうです。
コミュニケーション論はこのへんにしておきます。最後に、三本柱、しっくりくる雑談用語に塗り替えてみました。
①お金
・予算形式にして、封筒でそれぞれ用意する
・全ての生活収支を万円単位でいいからつける
②人格
・僕から言うことは特に無いが、先人の知恵は伝える
・気づいたことがあれば言うし、言ってくれたらいい
③紙に書く
・意外だが、悪習を断ち、良い習慣形成に必須なのがなんと紙
・お金の収支と気づいたことは必ず全部紙に書いて
ではまた次回に。