山田君

第4話 雑談と計画

コミュニケーションにちょっと幅が出るかも

 

山田君(仮名)とは、主にLINEでやり取りしながら計画を進めています。

すると、すぐに話があちらこちらに脱線するのです。

返済計画のとなるような堅い話をすると、ストレートな反応ではなく、斜め前に進んだ返答か、もしくは全く関係の無い話題が返ってくるのです。

彼とは付き合いも10年程あり、今に始まったことではないのですが、今回に関しては事情が事情なので、その真意を考えておかないといけないなと思い、考察しました。

これがまた、よく考えると凄いことなのかもしれない、と思えてきました。

今回は「計画の話をしても結局雑談に終わる意味」というテーマで書きたいと思います。

「身近に、会話が成立しない人がいる」という人には、もしかすると一読の価値があるのかもしれません。

 

 

プロジェクトの意図を再確認

 

返済計画としては、骨組みはできていて、脳内作業の8割は終わった感じがしています。あとは具体的なことを伝えて、軌道修正を加えながら経過を観察する作業をするだけです。もちろんあくまで机上のことで、油断してはいけませんが。

 

というのも、計画通りに1日を過ごすことは簡単であっても、最長5年という期間を考えるとどうでしょうか。1800日を超える期間、ずーっと計画を意識して、緊張しながら過ごすという、こんなに苦痛な人生があるでしょうか。

 

答えは「NO」です。

続くわけがありません。極端に言えばですが、僕の中では、

①挫折するか

②債務履行を苦痛に思わない[習慣]が形成されるか

の二択だと思っています。だってそうですよね、山田君は自分の意志ひとつで108万円の借金をしたわけではありませんよね。借金に借金を重ねる過程で、[悪い習慣]が形成されたことこそが、彼が今苦しんでいる真の要因なのですから。

 

誤解を防ぐためにひとつ言っておくと、多重債務=苦痛ではありません。例えば、資産を急拡大させているような活発な不動産投資家の中には、多重債務者がたくさんいます。何が違うのかというと、「資産になる借金なのか、負債になる借金なのか」だと思います。

今、我々がプロジェクトとして取り組んでいる問題の本質は、

山田君が、借金を返すのに十分な[一生ものの良い習慣]を身につけ、無事に完済することに他なりません。

 

そして数年後、山田君の習慣形成がうまくいって、過去のものとなった108万円の借金は、「振り返ると、資産になる借金だったなぁ」と思ってもらえたら最高なのです。そうなると信じて、プロジェクトを投げかけました。

 

 

脱線の本質は、美しい

 

土俵は整ったわけです。そして山田君の足は、俵にかかりました。ピンチであると同時に、逆転のチャンスです。

 

そして僕は、いくつか具体的な行動を促すと共に、プロジェクトの三本柱を伝えました。

①資産管理

②マインドセット

③アウトプット

我ながら素晴らしい3本柱です。すると、パンダのスタンプが返ってきました。核心部分には反応がありません。

 

そして雑談に移行します。

・自虐ネタ

・酒呑みネタ

・下ネタ

・労働

・ゴシップ

・戦争

などなど。彼との雑談は軽快で、面白く、非常に多岐にわたります。

 

三本柱は真剣に伝えたつもりなので、戸惑いが無いと言えば大ウソです

だからここで整理させてもらいます。

 

真剣な話をしていて、雑談に移ることほど、美しいことはありません。

 

山田君が発しているのは、「本題からは逃げるが、友達という人間関係からは逃げない」という意思表示なのです。つまり、うまくいっている証拠なのです。バカにしているわけでも、はぐらかしているわけでもありません。ここで勘違いして、離脱する人が多数いるのです。

 

作業内容を正確に、または詳細に伝えるだけで返済計画がうまくいくのであれば、誰も苦労はしません。

彼は、言語化して追加質問をするほど献身的ではありませんが、「真意が深く伝わっていないよ」と。このまま「YES」と言って始めてしまうと失敗するぞ、ということを暗に教えてくれているのです。

 

説明の工夫不足⇔質問不足 こんな関係、よく見かけないですか?

 

例えば、職場でも、このようなパターンで会話が成立していない上司と部下を私は毎日見ています。どちらの不足にも、必ず意図があるのです。どんな態度を示す相手にも、ひとつ納得のいくストーリーがあるのです。

戸惑うのは、僕(伝える側)の大きな勘違いなんです。性善説ではビジネスも家庭も長くは回りません。

山田君は根っからの正直者なんです。無理なものにはYESと言わないのです。そして慎重派なのです。言い換えれば、

だから、何度も何度も脱線して「信用の見積もり」を確認するのです。「話を変えた」ことを、「話を変えた」と受け取るのは早計です。

 

もう一度言いますが、真剣に本質論をぶつけても、その返答は無くて、雑談に切り替わるんですよ。戸惑いが無いと言えば大ウソです。でも、これは、最高にうまくいっている証拠なんです。ビジネスとは、お互いの虚構を一致させる契約だからこそ、信用第一なのです。

 

 

雑談の時代が来たよ

 

信用は、本音を交換することで生まれます。本音は、非ポジショントークつまり雑談から出やすいのではないでしょうか?

 

経済効率を重視するマネーマネープロでは、こういった解釈はなかなか困難でしょう。同じ金額が入るなら、成果が出やすい顧客を選ぶでしょうから。

 

今回の案件で僕が提示した報酬は「成功報酬でうまい飯を食わせろ」です。現金化を後ろに後ろに延ばして、信用の獲得に注力した形です。ゴールの形次第で、うまい飯を何回食わせてもらえるのか、プロジェクトの今後が楽しみです。

 

雑談形式の良いところは、信用を交換できることです。議題の本質を捉えていなくても、人格の本質を捉えていれば全然オッケーではないでしょうか。

雑談の末に、彼は「わいがヤバくなったらマジで頼むわ」「怖くてしゃあないわ」「このままやとオヤジに合わす顔が無い」と、本音をぶつけてくれました。

関係ない話をする中にも、偶然、三本柱に関してもほんのり出てきました。

もしかすると、真っ直ぐに伝わらない理由のひとつに、「用語」の不和があったのかもしれません。

例えば、本に書いてある堅い言語を、僕はそのまま咀嚼せずに、借り物の言葉で伝えたせいで、刺さる言葉も刺さらない、とか。「用語」や「論調」に関しては、色んな要素がありそうです。

コミュニケーション論はこのへんにしておきます。最後に、三本柱、しっくりくる雑談用語に塗り替えてみました。

 

①お金

・予算形式にして、封筒でそれぞれ用意する

・全ての生活収支を万円単位でいいからつける

②人格

・僕から言うことは特に無いが、先人の知恵は伝える

・気づいたことがあれば言うし、言ってくれたらいい

③紙に書く

・意外だが、悪習を断ち、良い習慣形成に必須なのがなんと紙

・お金の収支と気づいたことは必ず全部紙に書いて

 

 

ではまた次回に。